黒金

  • 五葉は目出度の若松様よ 枝も栄えて葉も茂る
    この家お庭に鶴と亀とが舞い遊ぶ 栄え目出度の葉も茂る
  • 峰の小松に雛鶴かけて 谷の流れで亀遊ぶ
    千歳の松が朝日に輝く四海波 高砂の爺様と婆様が亀に戯るせ
  • 金沢の内にも名所がござる 瀬戸に残りし秋の月 小泉涙に夜の雨
    内川暮雪に平潟落雁 野島の夕景色には 帰帆まつかよ 洲崎の晴嵐 称名の晩鐘にせ
  • 相模横山 照手の姫は 汲みし清水に姿を写し 窶れましたよ この姿
    髪を結う間も前掛け襷を取る暇も無い これも誰故 小栗様故 是非に及ばぬ妻の為じゃぞ
  • 筆も硯もお部屋にとられ 楊枝かみかみ紅で書く
    文察して おくれよ お部屋さん 誰しも恋路は同じ事やぞ 間夫は苦界の憂しさ晴らしじゃぞ
  • 新玉の門には 軒にしめ松かざり 夫婦祭りや桜狩り
    菖蒲刀や 幟や鯉が いさぎよく 七夕に 筆を染めては 参らせそろかし候
    まだ色よい 返事を 菊見月かよせ
  • 舟は出てゆく 帆掛けて走る宿の女子は出て招く
    お前は いつきなます 風の便りで晩にくる まだ 話す話しは 山々ござんすせ
  • わしの在所は 京の田舎の片ほとり八瀬や大原で黒木売り
    忍ぶこの身を秘めじのみとして妻方に 黒木めしませ買はしゃんねがいせ
  • 今宵逢ふても また明日の夜には 逢ふや逢ふめや 知りもせぬ
    それにすやすや 眠りやしゃんしょが 寝かしゃせぬ
    その訳を話さぬうちには 寝かしやせぬぞえ
  • 品川の内にも 名所がござる 七つ八つ山 沖津の森よ 沖で網を引く 手潜引く
    宿の芸者は 二上り端唄の 三味を引く 三丁目では 上り下りの客の袖を引く
    高輪では 十と八町を 牛が車を引くせ
  • 何が不足で 枕を投げる 投げた枕に咎めはない
    もしやこの子に 当たったならば なんとしょう 腹が立つなら
    この子を抱ききなよ まだ仲の良いとき出来た子じゃもの
  • あわれなるかよ 石童丸は 父を尋ねて 高野の山に母は麓の 玉屋が茶屋に
    昇り逢うては 九百九十九の寺々や いくら尋ねても尋ね当たらぬせ
    巡り逢うても父と名乗らぬせ
  • 沖の暗いのに 白帆が見ゆる あれは紀伊国蜜柑船
    蜜柑船かよ あれは紀伊国 やれこのこれわのさ こりゃ蜜柑船かよ
    甘茶でかあっぽれせ まだ塩茶で かあっぽれ 濃い茶でかあっぽれせ
  • 咲いた桜に なぜ駒つなぐ 駒が勇めば 花が散る
    花は散りても また来る春に 目を出だす 留めし振袖は 二度とさくまいせ
  • 隅田川にも 名所が御座る 一の権現 二に待乳山 三に三囲 四に白髭よ
    梅若塚には 二つ並んだ あの枕橋 土手の桜に竹屋の渡し 波にゆられる都鳥かよ
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